1 真澄

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 琉一と私は近くに住んでいる。通勤で使う駅も同じ。それでも社会人になってしまえば、いつもいつも一緒にいることもなければ、理由がなければおいそれと連絡を取ることもできない。それが幼馴染という――家族でも恋人でもない――間柄のなりの果てなのかもしれないと常々思う。    だから私は琉一と顔を会わせる理由を作ることにした。それが――弁当を作り、届けるということだ。どうせろくな昼ご飯食べてないんでしょ? 若い今はいいけどさ、そんなんじゃ将来絶対に体を壊すよ。だからさぁ、私のお弁当でも食べておきなよ。コンビニ弁当よりは絶対に体にいいからさぁ。    ゴリ押しして、琉一に了承させたところで実はそんなに簡単なことではないことに後で気づいた。いくら同じ駅を利用しているとは言え、朝の九時まで席につけばいい私とは違い、琉一は八時過ぎには仕事を開始しているようだし、会社までの距離も所要時間も雲泥の差がある。壊滅的に時間が合わないのだ。    必然的に琉一にお弁当を届けるためには私の朝が早くなる。弁当を届けるには、早朝から弁当を作り、身支度も整えなければならないということだ。
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