悠木屋

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私はあのレイプ事件から夜が怖くて出歩けなくなりアパートは解約して浅草の実家で引き篭もってしまった。家族は優しくしてくれたけど私に対しては言葉一つ掛けるのもピリピリしているのを感じていたの。 仕事にも行かなきゃって思うんだけど体が言う事聞かないし... それに不眠は続き実家にいても気を使うし... それでセキュリティがしっかりしたマンションに引っ越したの。 1人でいるのはやっぱり怖かったけど慣れて行くしかないと思った。 ある晴れた日の土曜日、私は近くの公園へ散歩に出掛けた。 綺麗な青く澄んだ空には細い雲がたなびき気分も晴れやかだった。なだらかな丘に整列した家並木を見てると空にちょこんと丸い白い雲が浮かんでいたの。 変わった雲だなぁって思ったけどあまり気にも掛けず忘れていたわ。 そう言えば昨日弁護士さんから連絡があったのを思い出して電話してみた。 「あ、こんにちは。悠木と申します。 弁護士の永作さんいらっしゃいますか? 昨日連絡するのを忘れていて... すみません。」 「はい、永作ですが... ゆうきさんですか? どのようなご用件だったでしょうか?」 「え?今裁判中で先日検察の求刑が出たばかりのサララさんの誘拐事件の件でご連絡があったのかと思いまして...」 「サララさんですか? あのタレントさんの? 誘拐事件ですか? あのサララさんが誘拐されたんですか? そしたら大きなニュースになりますよね。 どちらにおかけなんでしょうか? 私忙しいのでそのような冗談に付き合ってられないんですよ。 それにゆうきさんっておっしゃいましたか? 私の記憶にない方で今迄の裁判でもそう言う方は知りません。 二度とこんな冗談で連絡しないで下さい。」 「あ!あのぉ...」 私はそう言われて何が何だか分からなくなりサララとサラサに連絡してみたの。
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