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桜子の時間軸
結局二人には連絡がつかなかったからサララの家に行ってみる事にしたの。
「どちら様ですか?」
広く大きな門の呼び鈴を押すとインターフォンから聞えて来た。
「私...悠木桜子と申しますが、サララさんはいらっしゃいますか?」
「少々お待ち下さい。」
暫くすると男性の声で、
「どちらの悠木様でしょうか?」
「あ、長谷部さんですか?
私です私。桜子です。」
「んん~、桜子様...
すみませんが記憶になくて
どちらでお会いしましたか?」
「以前、電話も頂きましたしサララさんには勤め先にも来て頂きお会いしました。え~、長谷部さん私です!桜子です!」
私は段々悲しくなって来て涙声になっていた。
「少々お待ち下さいませね。」
暫くすると門扉の鍵が開く音がした。
少し開けた扉の隙間から長谷部が注意深くまわりをうかがっていた。
私は”あっ!長谷部さん”と言ってペコリとお辞儀した。
長谷部は扉から出て軽くお辞儀した。
よく見ると後ろの方にはサララが不安そうに覗いていた。
「お嬢様のファンでいらっしゃいますか?
なぜ私の名前をご存知なのでしょうか?
しかもこの家の事もだれも知らないはずですが...」
「どうしてこんな事になってしまったんでしょうか!
どうして私は一人ぼっちなんでしょうか!
みなさん記憶がなくなってしまったんでしょうか?」
私は訳も分からず子供みたく大声で泣いてしまった。
すると後ろの方からサララが出て来て私の手を握った。
「いつもありがとう。今度は絶対に忘れたりしないから...
桜子さんですね。
これからも応援して下さいね。」
サララはいつもの笑顔で私にとってはトンチンカンな事を言った。
「サララ...ちゃんヒョットしたら近い内にグラビアの撮影とかある?
夏向けのグラビアだけど...」
私は泣きベソかきながら尋ねた。
「詳しくは言えないけど撮影は色々予定あるよ。」
「渋谷のホットビルのスタジオだけは行かないで!
うんん、あそこじゃなくても絶対に一人にならないで...
私の事、頭おかしいって思うかもだけど...
お願い...」
私は過去のサララに会ってるのかしら?と思いながら言った。
大きな門の前でやり取りをしながらサララの部屋がどうなっているのか、どんな本を読んでいるのか私は手に取るように覚えているけどそれを言ってしまったらきっと警察沙汰になると思って言うのを堪えた。
サララは帰り際サイン色紙をくれた。
それにはサララのサインと私の名前が書いてあった。
過去のサララと未来の私はどこまでもトンチンカンなのは仕方ないと思った。
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