4人が本棚に入れています
本棚に追加
私は受取った色紙の日付を見て過去に来ていると確信した。
夢の話しでもなくいま現実に過去のサララに会っているのだ。
もしこのままサララと一緒にいる事が出来れば彼女の深い悲しみの原因を知り取り除く事が出来るかもと思いながらどうにもならないジレンマの中にいた。そしてサラサにも会わなきゃと思い電話してみたが繋がらなかった。
次の日もいい天気だった。
青い空には細くたなびく雲が高い所で漂っていた。
私は昨日見たあの丸い雲を探してみたけど今日は見つける事が出来なかった。
「あ、サラサ...元気にしてる?」
「うん、久しぶりだね...どうしてるの?
裁判以来サララは仕事が忙しくて一緒にいるのに話もままならないよ。」
「そうなんだぁ、今度久しぶりに私の家に遊びに来ない?
色々お話もしたいし...」
桜子は尋ねた。
「うん分かったよ。サララの都合を確認してまた連絡するよ。」
私は過去のサララに会って以来、あの丸い雲を見つけようと常に空を見るようになっていた。
今日は3人が私の部屋へ久しぶりに集まる日でしかも初めてお泊りすることになっていた。でもあの丸い雲を見つける事は出来なかった。
わたし達は飲んで食べて遊んだ。サラサの影響でダーツを始めていたけどサラサには手も足も出なかった。楽しい時間はあっと言う間に過ぎ、日もとっぷりと暮れ満月に近い月が紅黄色にまったりと低空に浮かんでいた。
私はベランダに出て月を眺めているとサララが後ろから抱きついて来た。
「女の子は身体冷やしちゃダメなんだから...
何見てたの?あのお月様。
何だか悲しそうだね...」
「うん、そうだね...
あっ!」
その時、私は輝いている月の下に丸い灰色の雲が浮かんでいるのを見つけた。
「あのねサララ...私この間過去のサララに会ったんだよ。
長谷部さんにも会ったし、サララったらサインまでくれたし...」
「うん、覚えてる、って言うか今ふっと思い出したよ。
家に訪ねて来たよね...
あれは桜ちゃんだったんだね。
いつ頃だったんだろう?よく覚えてないけど...
桜ちゃんったら子供みたく大声で泣くんだもん...それに
色紙も書いたね。そそ、さくらこさんって...思い出した。
今度は絶対に忘れないって言ったよね...わたし。」
サララは涙声になっていた。
「そそ、やっぱりそうなんだね。
私達の色んな状況が変わったり思い出したりする時は必ずあれが現れてるんだよ。」
私は月下の丸い灰色の雲を指差した。
そこへサラサが後ろからサララを抱きしめて、
「あの丸い雲は部屋の中だって出て来るんだよ。」
私とサララはサラサを見つめた。
そして2人は双子の姉妹である事をお互いの両親に告白する時が迫っていると感じていた。
最初のコメントを投稿しよう!