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施設訪問
サララの場合
サララとサラサは預けられていたお互いの児童養護施設を尋ねる事にした。
サララが預けられていた施設は八王子で、サラサが預けられていた施設は杉並にあった。
最初は八王子の施設に訪れた。
二人は顔バレすると厄介なので変装した。
受付に行くと30過ぎの女性スタッフが怪訝そうに対応した。
「ご面会ですか?」
「いえ、実は22年前にこちらの施設に預けられ養子に出された赤ん坊の事を聞きたいんです。」
サララは受付窓口で腰をかがめながら聞いた。
「個人情報はお教え出来ませんが...」
「ええ、そうだと思いますが預けられた本人が当時の事を知りたくて訪ねて来ました。わたし自身の事です。」
そしてサララは両親から聞いた養子縁組の時の事を話した。
女性スタッフはタレントのサララだと気付き自分では手に負えないと思ったのか、奥へ引っ込んだ。
白髪の男性が出て来て別室に通された。
「私は一条と申します。22年前の何月頃か分かりますか?」
言いながら名刺を手渡した。
「12月頃と聞いています。」
「サランさん、12月2日生まれで間違いないですね。」
一条はサララが渡した住民票と施設の資料を見比べながら確認した。
「はい、間違いありません。
わたし...どのような状況で発見されてどんな経緯でこちらに引き取られて来たんでしょうか?」
「こちらの資料を見て頂ければ分かりますが、ほとんど詳しい事は不明のようです。東北のツナミ災害の際、木の枝に引っ掛かったベビーかご を見つけて降ろしてみたらサランさんを見つけて近くの避難所に運び込んだ。医者はいなかったけれど産婆さんがいて出来る範囲の対処はした。その内に雪が降り出して寒さが増したけれどある女性が一晩中抱っこしてお乳を吸わせていたようです。その後病院で手当を受けて施設に預けられたが放射能の影響で施設は閉鎖されこちらの施設に移送された。」
一条は一気に話した。
「写真とか何か品物はなかったんでしょうか?」
サラサが聞いた。
「え~と、こちらの方は?」
サラサを見ながら尋ねた。
「あ、わたし達は双子の姉妹なんです。この娘は杉並の施設に預けられていました。後日お邪魔しようと思ってます。」
「へ~ぇ、そうなんですかぁ...そんな事もあるんですね。
行方不明のご両親の心情を察するといたたまれなくなりますね...
あっ、ちょっと待って下さい。この備考欄の印は別に何か保管してあるかもしれません。」
そう言うと目頭を押さえながら一条は席を立った。
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