サララの記憶

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そうなの...その時わたしは飛び降りていたのね。 その二人が近くに見えて来たのはそう言う事だった... でも全てがスローモーションでジェル液の中にいるようだったわ。 リュックサックを背負った男性はキャップを被った女性の手首を絡め取り、彼女の動きを制てリュックからピストルを取り出し躊躇なく頭部に向けて撃ったの。彼女は一瞬にして人形のように力を失い崩れ落ちたわ。 そこから少し離れた所には別の女性が立ちすくんでいて顔を見ると間違いなかったの... 桜子ちゃんが口を手で覆って佇んでいたわ。 それからわたしは眩しい光に包まれて気を失ったの... わたしはサラサに揺り起こされた。 見慣れたスタジオスタッフの心配そうな顔に見守られサラサの柔らかい優しい手のひらを感じたわ。思わずサラサを引き寄せて抱きしめたの。 そしてわたしの悲しい気持ちは強く握りしめたサラサの手のひらで暖かく溶かされたようだった。 わたし達に起こった大事な記憶の一部分を取り戻せた気がしたけれどあの悲しくて寂しくて悔しい気持ちは一体何だったのか? それにどうしてあの屋上から飛び降りたのか... しかもこの出来事は前に桜子ちゃんが話してくれた夢と似てるし... 記憶のヒダに隠された事実は決して穏やかな事ではなく心を(えぐ)るような辛い出来事かもしれない... 何か悲しい出来事...きっと わたしはそう思ったわ。
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