賀茂野 四角の日常

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賀茂野 四角の日常

学校  昼間、 多くの生徒が集まり勉学に励む場所  中にはスポーツで自己を鍛錬し    自己成長を促す  人格形成に大きく貢献する場所 持った才能はそれぞれ  自分の興味の赴くままに  知的好奇心を刺激して  特定の分野に造詣を深める場所 そういった経験を通して  一生の友を作る場所 中には、恋だ、愛だという者いる。  人間として自然の感情です。  それ自体を否定しない。 その気持ちを持って日々を充実させることも  時には必要と認めましょう。 白髪の混じるひっつめ髪を後ろでひとまとめにした 女性教師がコホンと一つ咳をする。 リナは、このおばあさんの方がよっぽど魔女っぽく見えるわね  と思いながら聞いていた。 「理解されましたか?」  生徒に向かうような口調でリナに聞く。 「つまり、こういうことでしょ!」 深い皮張りのソファからリナは立ち上がって、細い脚に黒のリボンの付いたロングブーツのかかとを鳴らして窓の側に立つ。 「生徒は管理しやすい同じ服を着て、  スポーツで性欲を発散させろ」 「はあ!!!」 女性教師が目を剥いてリナを見る。 「あとは、知的好奇心?」  リナは女性教師の反応を楽しむように  微笑みを向けて 「ただのオタク活動でしょ」 と言い放つ。  リナの手にする鎖がジャリっと音がする。  鎖の先に立つ夜明はまばたき一つせずに  リナと女性教師を交互に見ている。 「禁止すると人間って余計にやりたくなるから  恋愛禁止にしないけど  学校が謝罪するような  スキャンダルは……」  リナはコツコツと足音を木の床に響かせて  女性教師の目の前に立って正面を向くと  いくぶん低めの声でズバリと言った。 「おこすなよ」  女性教師の顔が引きつる。 「本音はこうでしょ」  リナがクスクスと笑う。 「からかわないでいただきたいわ!」  女性教師は内心、怒り心頭だろうが、  年を重ねた分の忍耐力で冷静さを装っている。 「生徒は宝です。  大人になって社会を形成するための準備の場所として  人生のほんの短い間ですが、  人間が成長する手助けをする場所。  社会貢献をしているのです」 「単純に、スポーツでも文学系でも、  優勝して学校の名前を売れってことよね」  女性教師は無表情になってリナを見る。  説明を諦めたらしい。 「見解の相違です」  落ち着いた声になっていた。 「今回来ていただいたのは、  学校はどんな場所かの議論ではなく……」  女性教師は弱くため息をつく。 「事件の依頼なのですから」
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