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「こちらは、大変優秀な我が校の生徒、賀茂野 四角さんです」
昼田がリナに紹介をすると、四角に向かって
「こちらの方とお知り合いだったのですか?」
と冷静な中に厳しさが感じられる口調で四角に尋ねた。
「ハイ。よく知っております。この方は私の師匠です」
と元気よく紹介して、飛びついてくるとリナは予想して身構えたが……。
「いいえ。初めてお会いする方々です」
四角が表情を崩さずに断言した。
リナは一瞬で、何があったの?
しーちゃんに!
どこかに強く頭をぶつけて記憶喪失にでもなった?
それとも、鬼のようにくる電話もメールも無視していたから、
それで……悲しみのあまり、記憶を改ざんしたのかしらとまで思った。
「しーちゃん」と言って、ショック状態のまま、青い瞳を四角に向けたまま、しばし見つめるリナ。
この場合どうゆう思惑があるのか考えて、相手に合わせるのが上策だろう。
だが、本来の魔女の掟に中に、人間と深く関わらないというものがある。
リナは元からそう言った、古くさく、
意味も忘れ去られたルールなど守る価値なしと思っているが、
今だけはそれに従うことにした。
「どうされ……」
しばし、黙っていたリナを疑問に思って昼田が尋ねようとしたが遮って、
「いいえ。私の勘違いでしたわ。全く、何も、知らない。当然、なんの関わりも持ったことのない人でしたわ」
とリナはほほほと笑う。
(覚えて無いなら好都合よ。このまま忘れていてくれれば、
もう、師弟関係は解消よ)
内心、やったと思っているリナを見て、
四角は拳をギュッと握りしめた。
その小さな変化に気づいたのは、
いつでも、冷静でいられる夜明だけだった。
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