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「がああ!!」
銃弾の線が通り過ぎると同時に、雪斗が悲鳴を上げる。
その目には吹き飛ばされた自分の《手》が見えていた。
掃射によって、左手が千切れ飛んでしまったのだ――。
「ぐあああああ!!」
雪斗は血の噴き出す腕を押さえ、その場に崩れ落ちる。
「雪斗君!!」
知夏仔たちは慌てて雪斗をビルの中へと引き込んだ。
雪斗の左手は肩から下がなくなっていた。知夏仔は慌ててブラウスの布を千切ると、雪斗の腕を止血した。
「く、くそっ……」
雪斗は苦悶の表情を浮かべていたが、意識ははっきりしているようだった。彼は腕に激痛を感じながらも、ヘリの行方を必死に目で追った。
と、ヘリは上空で大きく旋回し、機体を雪斗たちの隠れるビルのほうへと向けた。
「来る!!」
銃口は雪斗たちを狙っていた。彼らが隠れているビルの壁は大きく崩れていて、直線方向から機関銃を撃たれるとひとたまりもなかった。
このままじゃやられる!
もはや、逃げる時間などなかった。雪斗たちはただ呆然と迫り来るヘリを見つめるしかなかったのだ。
「し、し、死ねええええ!!!」
夜奈はそう叫ぶと、掃射ボタンを持つ指に力を入れた。
この町の囚人たちを殺したあとは、国民全員にUA細胞のバージョン3を打ち込んで、殺す。そして全世界の人間たちを……。
夜奈は破滅的な笑みを浮かべた。この世界を自分の手で終わらせることに無上の喜びを感じていた。
だがその時、一筋の光が照りつけ、夜奈の目が思わず眩んだ。
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