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雪斗はその声のほうを見る。
するとそこには、美羽が立っていた。
彼女はヘリに激突する寸前バイクから飛び降り、助かっていたのだ。
「美羽ちゃん!!」
雪斗は満面の笑顔で彼女のもとへと走った。
そんな彼を見て美羽も慌ててそばへと駆け寄る。
「美羽ちゃん!」
「雪斗さん!!」
燃え盛る炎の前で、ふたりは強く抱き締め合った――。
町は静かだった。
夜奈がヘリとともに死んだことにより、UA細胞のバージョン3で操られていた兵士たちはその動きを止めたようだ。
今、死都に何人の囚人たちが生き残っているのかは分からない。
しかし少なくとも、5人の姿は確認できる。
知夏仔、碧依、亜須香、そして美羽と雪斗……。彼らは南地区の外れにある小さな墓地へと辿り付いた。
「この近くに岩山があるはずだ。そこに……、破棄された炭坑用の通路がある」
美羽に肩を抱かれながら歩く雪斗は、朦朧とした意識の中でみなにそう伝えた。
左肩からは出血は何とか止まったものの、あまりにも血を流しすぎた。気を抜けばすぐにでも意識を失うだろう。
あと少し……。あと少しで外に出られる。
雪斗はそれだけを信念に意識を保ち続けた。
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