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茜色の光が照らす公園の中、「もーいいよー」の合図で子供たちの遊びが始まった。
息をひそめて隠れる子どもたちの近くを赤いワンピースの鬼役——リサが通り過ぎる。キョロキョロと周りを見わたすリサの視界に、土管から飛び出す青い靴の先が映りこむ。
「あ! ユージ見っけ!」
「えっ」
鬼の子は屈んで土管の中をみると驚いた顔をしたユージがダンゴムシのように丸くなっていた。よく見るとその奥にはエリナ、ルイ、ユウゴの三人が同じように丸くなっている。
「うわー、まじかー。もう見つかっちゃったか」
「やっぱりこれちょっと無理があったのよ。だいたいこの土管せますぎ」
「ちぇ、今回はいい作戦だと思ったんだけどなあ」
不満そうな顔をしながら四人は土管から次々と出てくる。その様子を見ながらリサは不機嫌に眉を寄せる。
「みんなおんなじところに隠れてたらつまんないよ! もっと他にも隠れる場所あるじゃん」
リサはパンダの形をしたロッキング遊具やすべり台を指さす。
そんなリサを見て四人は顔を合わせて笑う。その態度にリサはさらに怒号をあげる。
リーンゴーン、リーンゴーン——。
四人の声に覆いかぶさるように遊びの終わりを告げる鐘の音が鳴り響く。
「え、もうこんな時間? 早いなあ」
ユージはつまらなそうに足元の石を蹴る。偶然にもその石がリサの足に当たるが、さっきみたいに怒っている暇はない。早く家に帰らないと。
リサたち子どもは小さな時から大人たちに言われ続けてきた約束事がある。
夕方、鐘の音が聞こえたら暗くなる前に急いでお家へ帰ってきなさい。なぜって、夜はバケモノたちの時間だからね。もし真っ暗になっても外にいたりなんかしたら、悪いバケモノに食べられてしまうよ。
こんな話、最初は誰も信じてなんていなかった。よくある子供だましだと思っていた。だからリサたちが十歳の時、四人と仲の良かったレオは鐘の鳴る町の中、一人で公園に残った。大人たちの言っていることは嘘だって、証明したかったんだ。でもあの後、レオの姿を見た者は誰もいなかった。大人たちの言っていることは本当だって、嫌でも知ることになったのだ。
「あーあ、家に帰ってもうちの親にうるさく言われるだけだしなあ。一年前のレオみたいにさ、家出しちゃおっかな」
「冗談でもそれはねーよ。てゆーかそんなことしたらバケモノに喰われるだろ」
ユウゴの返しにエリナは「たしかに」といたずらっぽく笑う。
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