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「ほーら、着いたわよ。何もなくてよかったわね」
そこはたしかにリサの知っているケーキ屋の前だった。お店はもう営業時間外のようで、明かりはすでに消えていた。
ここに来るまで目を開けてはいけないと言われ、内心不安でいっぱいになっていたせいで、緩んだ目元から涙がこぼれる。
「ここからはもう一人で帰れるわよね? もう寄り道なんてしないで、まっすぐ帰るのよ。私との約束ね」
カレンは屈んでリサの頭をなでる。顔を隠した仮面は、わずかに笑っているように見えた。
「いい? お家に帰るまで絶対に振り返っちゃだめよ。こんな夜の町に未練なんて持ったら、今度こそ悪いバケモノに食べられちゃうわよ」
「うん……ありがとう、お姉さん!」
リサはカレンに笑顔を向けると家へ向かって目の前だけを見て歩き出す。
見慣れた道までやってくると会いたかった人影が目に入る。
「リサ! こんな時間までどこへ行ってたんだ!」
走ってきたリサのお父さんはリサの両肩を掴み、それからリサを鼓動が聞こえるくらい強く抱きしめる。リサも同じくらい強くお父さんを抱きしめた。
「ごめんなさい、お父さん」
「謝るのはまず家に帰ってそれからだ。お母さんが家で待ってるから早く顔を見せてやれ」
「うん!」
安心したリサは振り返ろうとしたが、あのバケモノの顔を思い出てやっぱりやめる。
月の光に照らされた帰り道、リサはもう絶対に帰りに寄り道しないと、そう心にとめた。
それから心の中で優しいお姉さんにもう一度「ありがとう」と呟いた。
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