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Ⅶ 贖罪のバラッド
「……オルペさん! 大丈夫ですか、オルペさん!? ……! これは……」
司祭バコスが思わぬ死を迎えた直後、ようやくメデイアがオルペの居場所を捜し当て、すでに生き絶えている司祭を見て驚きの声をあげる。
「エヴリーデ……」
だが、オルペは横たわる司祭の骸を虚ろな眼で見下しながら、驚くでも安堵するのでもなく、なんだか悲しそうな表情を浮かべて恋人の名を呟いていた。
「お~い! メデイア~! オルペ殿~!」
「二人とも無事か?」
またそこへ、わずかな時間差でアウグストとハーソンも心配した様子で駆けつける。
二人とも狂信女に揉みくちゃにされ、白いマントや陣羽織 はビリビリに破れ、顔はあちこちひっかき傷やら殴られた痕だらけである。
「ハーソン団長! それに副団長! 狂信女達は?」
「少々手荒な真似をしたが、全員なんとか眠らせた。次に目を覚ます時にはまともな精神状態に戻っていることだろう」
「幻覚を見せる煙の松明も消せるだけは消しといた。狂った町娘に兵士の亡霊……まったく、こんなのはもうこりごりだ!」
駆け寄る彼らを目にしてメデイアが尋ねると、ハーソンとアウグストはボロボロの身なりを多少なりと整えようとしながら、ひどく渋い顔をしてそう答える。
「そちらも仕留めたようだな。それにしては浮かぬ顔のようだが……これでもう、君は命をつけ狙うものから逃げ回らなくてすむのだろう?」
それから地面に転がっている司祭とそれを呆然と見つめるオルペに目を向けると、どうにも違和感のある彼の態度にそんな言葉を投げかけた。
「……僕は、またエヴリーデを突き放してしまいました……もう二度と、見捨てたりはしないと誓ったはずなのに……」
気も漫ろな様子ながらもハーソンの質問は耳に届いたらしく、オルペはぽつり、ぽつりと、力のない声でそう答える。
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