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「流石に獅琉は料理が上手いな! ローストビーフが最高だ」
「でしょ? ちょっと辛めの味付けがミソでさ──って、潤歩一人で食べ過ぎ!」
「何これうめえ。酒が進むわ」
「エビフライもおいひいでふ」
大雅と二人でソファに並んで座り、紙皿に盛ったチキンライスにエビフライやマッシュポテト食べていると、「お子様ランチか」と潤歩に突っ込まれた。
「でも竜介さん、四年もAVモデルやってるって何か凄いです。ベテランだなぁ」
「そんなことないさ。楽しんでるうちに時間が経ってたってだけだ」
俺なんてまだデビューから半年くらいしか経っていないけど、もう既に結構な量の撮影をしてきた気分だ。単純計算で竜介は俺の約八倍の時間をAV撮影と共に生きてきたということになる。数字にすると凄まじい。
「しかし本当にありがとうな。四周年なんて結構中途半端だが、こうして祝ってもらえるのは嬉しいよ」
「俺と潤歩の四周年も来年よろしく!」
「獅琉さん達ももう四年か。大雅は?」
「俺は亜利馬よりちょっと早いだけ。あんまり変わらないよ」
「同い年だもんね」
そうそう、と言って獅琉が手を叩いた。
「竜介、俺達からプレゼントがあるんだよ。……これ、ミニチョコの詰め合わせね。ネットで業務用のやつ箱買いしてきたよ」
「おお、ありがとう! これは最高だ! しばらくチョコに困らない」
ずっしりと重い箱を抱えて、竜介が満足げに笑う。
「………」
ソファに座ったまま隣を肘でつつくと、大雅がもじもじしながら紙袋を竜介に差し出した。
「俺からは、これ」
「お、大雅もくれるのか。何だろ?」
獅琉が綺麗にラッピングしてくれたリボンを解き、竜介が包みの中からダークブラウンのマフラーを取り出す。
「おお……! めちゃくちゃ暖かそうだ!」
大雅が唇を噛んで俯いている。何か言おうとした潤歩を獅琉が無言で制し、俺達は竜介の様子を見守った。
「手作りじゃないか? 俺のために編んでくれたのか」
「……暇だったから」
ロングのマフラーを首に巻き、竜介が口元から鼻先をそこに埋めた。
「大雅の匂いがする」
「………」
「いつも一緒だ」
ほっこり気分で目を細めた俺の隣で、大雅が動揺している。竜介がこちらに来て大雅の前にしゃがみ、解いたマフラーを大雅の首にそっとかけた。
そのまま大雅を引き寄せ、自分の首にもマフラーを巻く竜介。ふわふわの毛糸に包まれた二人が視線を合わせている。
「ありがとうな」
その目が閉じられた瞬間、俺の顔から大量の湯気が出た。
「……おい、どうすんだこの空気」
潤歩が獅琉に囁いたが、獅琉の目はすっかりハートマークになっている。
「獅琉!」
「はっ! ……あ、ごめん。何かドラマ見てるみたいでさ。前に撮った俺達のドラマ、こっちに差し替えて欲しいくらいだよ」
「って、って、……てちょっと竜介さん、そこまでにしてくださいよ! 大雅が溶けてなくなっちゃいますから!」
慌てて二人を引き剥がしたが、大雅の顔は既にとろとろだ。
響く笑い声と温かな言葉。
今日は大雅にとっても俺達にとっても、本当に素敵な一日になった。
数日後──
「おはようございます竜介さん! ……あ、そのマフラー」
「おお、おはよう亜利馬。大雅がくれたマフラーだ、暖かくていいぞ」
「……ロングだとは思ってましたけど、そうして巻いてるの見ると思ったよりすごい長いですね」
竜介の顔の半分をぐるぐるにして、更に余った部分が彼の腰の辺りまで垂れている。まるで作り手の愛情がそのまま長さに現れているかのようだ。
「今は少し暑いくらいだが、これからの時期は重宝しそうだ」
「確かにそうですね……」
──二人で一つのマフラーを巻くのって、憧れるもんなぁ。
「似合ってますよ、竜介さん!」
「ありがとうな!」
俺は竜介と並んで歩きながら十月の空を見上げ、二人のためにやって来る冬を想って含み笑いした。
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