三節「白い風」

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「さて、中心部分に誰か人が居るようだな。多分、呪術師とみていいんだろうが、どういう系統かまでは判じきれんな」  結界術師が居るのは間違いなくとも、その中身を分析しきれない、と言うのだ。  正直、こんな場所でうんぬんしていたところで意味はないとも思うけれど。 「それはそうだがな。しかし対策を立てられないのは厳しいだろう? 特に上手の人間が相手ならな」  仁は剣士とはいっても、人を斬れないのだから。  それはそうだけど。僕は真剣を持ったところで、人を斬った経験などない。あくまで殺しにかかってくる敵への対処というだけのことだった。  武器を持つ武術家は、無手の武術家と相反するし、基本的に武器を持たない異能者のような相手とは相性が悪い。それは、物質的な武装をしない呪術師であっても同じことなのだ。  そうなると厄介だとは解るけれど、しかし手の打ちようがないのなら、真正面から仕掛ける以外にない気もする。  そんな風に考えていると、剣士らしい考え方だな、と一言でまとめられてしまった。  愚直なのは仕方ない。 「解るさ。だが、仁は本来、策を弄するタイプの使い手だろうに。幼少期から、そうなるように育ててきたんだがな」 「まあね。純粋な力比べをしたことはないよ」  昔、神憑になったあの一回を除いては、だけど。 「ならば尚更だ。準備くらいはしておいて良いだろう? あまり面倒がるなよ」 「はいはい。わかっているさ。でも、そうなれば一度家に戻る必要があると思うんだけど」  行ってくればいいだろう、と簡単に言われてしまった。
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