三節「白い風」

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……  人間、街の住人に危害が及ばないならそれでいいのだが、だからと言って僕たちが犠牲になるわけにはいかないのが当たり前の心情だ。 「くぅ……くぅ……」  背負っているニアの寝息が首を撫でる。なんでか急に倒れ込んでしまったというより、電池が切れたような眠り方だった。子供っぽいというかなんというか。  この状況で眠れる豪胆さは見習うべきなのかもしれないけれど。  しかし軽いな。食事とか適正にとっているのか心配になるくらいだ。まあ、僕が心配するようなことじゃないのだろう。 「柔らかいね」 「頬を引っ張るなよ、寝ている人の」  涼が不思議そうにニアの頬を伸ばしていた。それで彼女が目を覚ますことはなく、呼吸も乱さず眠り続けていた。 「可愛いなあもう。人形みたいだなーって思うんだ」  わかる。 「それよりさ」  と、礼吐くんは前方を指差す。その先には何か大きな影が見えていた。黒くはなく、全体的に赤く発光している。  その燐光を視界に収めながら、次の礼吐くんの台詞を待った。 「あれ、敵かな。排除するべきだと思うけど」 「敵だといっても、属性が判らないなら取れる手段もないけど」 「あれは式神だよ?」  背後で聞こえた声にどきりとする。いつの間にか三水が目を覚まして、その相手を真っ直ぐに見詰めていた。 「いーたんの呪術だね。ボクは直接相手にしたことはないけど」  いーたん?  あだ名で言われても判りはしないし、まあ呪術師に詳しくない僕にはどちらにしても変わりないかと首を振った。 「排除できるならやってみようか。避けられないなら、立ち向かうしかないものな」  言うと、涼が薙刀を構える。  同時に、礼吐くんも両手に黄色い光を纏う。  さて、僕はどうしよう?
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