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濃密な夜気が寝屋を満たした。タケルがゆらりと身を起こす。私は軽く身構える。それと悟られないように細心の注意をはらいながら。でもこの肢体は再びタケルの前に投げ出す準備をする。タケル、ヤマトタケル、遠い強国、ヤマトの英雄。
私、ミヤズは、弱小といえども族長の娘。恥ずかしいことなどないようにヤマトタケルの妻とならなければならない。族長の娘としての務めを果たさなければならない。
でも、それ以上に私はタケルに強く惹きつけられている。私は恐れた。思いもかけない己の心の変化を。私は、誇りを胸にタケルに抱かれるつもりだったのに、早くもその決心は揺らぎつつある。
タケルの指先が私の頬に触れた。
私は小さく声を上げそうになった。
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