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熊子は右側にいる遺族へ深々と頭を下げ終えると左側にいる遺族にも深々と頭を下げた。遺族間の派閥に苦慮した熊子はほっと息を撫で下ろした。
そのせいだろうか中央の祭壇が鮮明に熊子の目に映し出されていた。
最上壇には故人となったジョニーの遺影が飾られていた。うっすらと笑うセピア色のジョニー。何度見続けてもその表情が変わることはなかった。ぎゅっと胸が締め付けられた熊子。それを堪えしのぐには自分の分厚い唇を思い切り噛み締めるしか今の熊子には手立てがなかった。
熊子はお焼香をしようと右手を差し出した。人差し指と親指を器用に使い粉状のお香をつかみ上げた。そして煙が舞っている香炉にぱらぱらと落としていった。粉状はめらめらと火がつき灰色の煙を巻き上げた。それは受けてのない大気へと舞っていってしまったのだった。
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