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ーーーーーーーーーーーー 何やらバタバタし始めたので、正直何もせず手当されてるだけというのは妙に申し訳ない。戦兎だってボロボロなのに。 なので立とうとすると 「コラ勇騎!包帯巻くんだから立っちゃメッ!」 美穂に怒られる。 「「ぷッ…!メッ…て。怒られてやんの」」 万丈(筋肉バカ)(後輩)に笑われる。 踏んだり蹴ったりである。 すると一通りの準備が済んだらしい戦兎が驚いたような顔を浮かべていた。 「もしかしたら…行けるかもしれない」 「何が?」 科学がわかるほどの学はないのだが聞き返す。 「…俺達の世界にあるファントムリキッドは仮面ライダーに成れる基準値(ハザードレベル)の人間にとっても劇薬だ。だがこっちの世界のコレは…リスクはあるが軽減されているみたいだ…だけど…」 可能性があるように言ってまた渋る。 コチラを気遣ってのことだろうが、ちょっと苛々(イライラ)してきたので… 「「「「あーもう!御託はいいからやれよ!俺達もパワーアップできるってことだろ!?」」」」 「「「「………あ」」」」 どうやらやきもきしていたのは俺だけじゃなく輝も神崎も、そして耶俥も立ち上がって声を上げていた。 声は出さなかったが、道紀とかいう少年も立ち上がっていた。 「…最っ高だな、お前等」 微笑む戦兎。それだけならカッコイイのだが、何故か立っているアホ毛のせいでぶち壊しである。 「ついてきてくれ…」 部屋を出て、保健室のような別室に案内される。哀奈(教授)さん曰く仮眠室との事だが、そこには仮眠とは無縁そうな。硬質のカバーを着けた寝台が5つ鎮座し、あとのベッドは端に追いやられている。 「…数日は使えなくなりますよこの部屋」 家主に確認を取る戦兎。 劇薬を簡易装置で注入するのだから、数日でもどうかと思うが。 「気にせずやっちゃって。やっくんがデスクで寝ることになるだけだから」 「オイ、ソファあるだろ」 「ただしやっくん、テメーはダメよ」 「職場の環境改善を要求します!」 「ただし耶俥、テメーはダメだ」 「2回目!あとソレっぽさを追求しましたみたいなドヤ顔ヤメロ!」 「てへぺろ(はぁと)」 …なんとも締まらないが、とりあえず始めて欲しい。 被験体(モルモット)第1号は俺だった。 寝台に寝転がると、蓋が閉められる。 緩やかに漂ってくる気体(ファントムリキッド)。 そしてソレは訪れる。 「…っ!ぁああああああああああっ!」 緩和されていると聞いていたのにこのレベルだ。 苦しくて…全てを投げ出したくなる。 こんな苦しみを耐えて、戦兎も、万丈も、一海も、幻徳さんも…仮面ライダーになったというのか。 「「「「ーーーーーーーーーーーーーーー!!!」」」」 外から漏れ聞こえてくる言葉にならぬ悲鳴。 どうやら、輝も、神崎も、耶俥も…道紀という少年も…“実験”が始まったらしい。 少し苦しみに慣れてきた頭で、俺はぼんやり彼らの身を案じた。
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