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「おいおい…そんな姿のビルドでこのキルバス様に勝てるのかァ?」
「さぁ?…“実験を始めようか”?」
桐生戦兎のお株を奪う決め台詞を放ち、ドリルクラッシャーを手にする。
「ハッハァ…!面白い、大した自信だァ!」
奴が手にしていたのはカイゾクハッシャー。元はビルドの武器だが、かつての世界線では奴も使っていたから別段驚きはしない。
放たれる光矢を刀身で弾き飛ばすと、ズレたソレが調度品の置時計を粉々に砕いた。
「気に入ってたのに…お前、後で弁償させるぜ?」
「ぬかせぇ!」
ここからは斬撃の応酬。
確かに性能的にはキルバスの方が圧倒的に上だ。
だが…
「性能差なんざ紙切れみたいなモンだ…」
鍔迫り合いから刃をずらすとそのまま、ガラ空きとなった腹に履帯の回転により強化された蹴りを放つ。
「ぐっ…!」
「伊達にあの“大戦”を制したわけじゃないんでね…お前みたいな新参者には負ける気がしねぇ…」
「最っっ高ダァ!」
構えたのはカイゾクハッシャーとドリルクラッシャーの二刀流。
結局、純粋な奴の力は核となる装置のみ。
ビルドドライバーも
数々の武器も
全ては桐生戦兎が創造したモノ。
「お前は盗んだ装飾品を身に付けて燥いでいるだけの憐れな独善者だよ…昔の俺と同じ…いや、今もか」
脳裏に浮かぶのは、全てを喪い“与えられた力で大戦の覇者となった日”。
あの頃の俺はただ憎しみのままに、世界を壊したかっただけ…。
だが今は…。
「俺は破壊者から変わった…」
ある男の言葉を借りるなら…
「悪を倒すためなら、どんなに汚れた泥でも被る。それが、本当の英雄ってもんだろ…。俺はそうなりたいんだよ…」
俺の言葉も所詮借物の継接だ。
だが…この覚悟は、俺だけのものだ。
「何を言ってる!戦いを没頭もうぜェエエエエアッッッ…!?」
突き立てられた刃が奴の動きを止める。
『シュワっと弾ける!ラビットターンク!スパークリーング!イエイエーイ!』
葛城忍のビルドでは無かった、桐生戦兎自身への変身。
それを齎したのは、俺の意思への力の回答だ。
「く…あ…!」
膝をつくキルバス。
「今回は見逃してやる…お前の覚悟…楽しみにしてるぜ?」
「…っ!」
窓をぶち破り逃走していく奴を追うことなく戦衣を解除した俺はソファに座り込み、何事も無かったようにコーヒーを注ぎ始めた。
「不味っ…」
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