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令和二年になって、一月も過ぎ……
二月の第一月曜日の夕方……
僕は仕事からの帰りだった。
いつものJR後九寺駅で下車して、駅前に出ると、何やら騒然としていた。
いったい何事だ……?
「近くのマンションで火災が発生したらしいぞ!」
通行人の会話が聞こえた。
僕は、特に興味は無かったが、いつもの通り道に近かったので、ほんの好奇心から、フラー……と足が向いてしまったのだ。
タクシー乗り場に出ると、ビルの向こうに見える空が赤く染まっていた。
僕も、他のヤジ馬に流されるように横断歩道を渡ると、路地の方へ向かった。
路地は狭いセイか、ヤジ馬はいなかった。
しかし前方には、現場の五階建てマンションが見えている。
その五階が火元らしく窓から炎が出ていて、消火活動中の消防隊員の姿も見えた。
僕は震える足で、その直前の歩道に立った。
「このマンションは開業前だったんで、入居者は皆無だから被害者は無しですよ」
「そうですな……。しかし、とりあえず消火はしてほしいが」
と、事情ツウらしき会話が聞こえてきた。
(なーんだ……良かった……。じゃ、帰ろう……)
と僕が思った時、その火災現場の窓から、何やら小さい物が飛び出して、ヒラヒラ……と落ちてきた。
それは写真らしく、僕はホイッと取ってしまった。
ブリント面を見ると、それは火災現場の写真だった。
(えっ、どうしてこんな物が、無人の所から……? ひょっとして誰かいる?)
僕は、その写真を消防隊員に見せようと、行きかけた。
が、突然、僕の周りの光景が変った。
そこは火災現場で、燃え盛る部屋に、僕はいた。
「うわー! どうしよう……」
僕は、あわてて玄関へ走った。
しかし、ドアにはカギがかかっていて開かなかった。
僕は仕方なく、窓に向かった。
すると燃える天井が、僕の上に落ちてきた。
「うわー!!」
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