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俺は本気でカメラマンを目指している。
テレビで観たカメラマンに憧れ、写真集の写真に憧れ、俺もあんな写真を撮りたいと思った。
カメラマンが持つような大きなカメラは持っていない。家の小さなデジカメで写真を撮る日々。それでも、良い写真が撮れたらウェブから応募出来るフォトコンテストに応募しているが、入賞したことはない。
高校で写真部に入れば、学校のカメラで本格的な写真がたくさん撮れると思ったのに、写真を撮るのは学校行事のみ。撮影会や写真部の大会等の積極的な活動は皆無。自主的な撮影は、文化祭の展示用写真くらい。
「見て見て!これは良く撮れてない?」
甲高い声にチラリと目をやる。女子3人組の1人、中野明梨が他の2人にスマホを見せていた。
「かわいい」
「ヒナタちゃん、ほんと可愛い」
ヒナタとは中野の飼い猫らしい。度々話に出るから、俺まで覚えてしまった。
「でしょでしょ?奇跡の一枚!」
中野は自己紹介で猫を飼っていると言っていた。動物が好きで、動物の写真を沢山撮りたいとも言っていた。
そう言いながら、撮影はいつもスマホ。デジカメすら持っていない。だけど、学校行事の撮影は、学校のカメラを借りられるから問題はない。
クラブ勧誘の時「スマホでも、写真を撮るのが好きなら大歓迎です」と言っていたのがマジだと知った時は、この高校を選んだことを少し後悔した。
つまり、俺ほど真剣に写真を撮ろうとする奴は、この部にはいないのだ。
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