カメラ

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「鈴木は陸上部の予選会、行くのか?」 「行くよ。高山は行かないのか?」 「面倒だから今回はパス」 「やっぱり…」  高山のやる気のなさに苦笑が漏れる。  中学までサッカー部だった高山が写真部に入った理由を聞くと「楽そうだから」と答えた。写真は嫌いじゃないけど特別好きでもない。つまり、休日に撮影に出掛けるのは、面倒以外何物でもないと。  確かに俺も面倒だと思う。俺が撮りたいのは自然の風景で、人間にはあまり興味がない。だけど、本格的なカメラを使える機会が学校行事しかないなら、面倒でも行くしかない。 「じゃあな」 「また明日」  高山と別れて家路を歩く。 「カメラ欲しいな…」  家の古いデジカメで、コンテストに入賞出来るような写真が撮れるわけがない。  小遣いとお年玉でいつか買おうと目論んでいるが、貯金はなかなか貯まらない。  俯きながら歩いていると、突然、周りが明るくなった。
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