episode 10. 仮説

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 トレフル・ブランは「自信があるわけじゃないけど」と言いつつ頷いた。 「俺ならそうします。一般兵……ボタンのないふつーの雪だるまだけなら、ゴーレムに作らせることも可能だと思うんですよね。すっごい職人気質で、ひとつずつ自分の手で作らなきゃ気が済まない、っていうならともかく、そのほうが効率的でしょ。襲う場所も増えてる、そのたびにゴーレムの数も増えてる。実際、コツコツ作ってる時間とかないと思うんですよ……もっかい再生してもらっていいですか」  次に再生を停止した場面には、手袋をつけた魔導人形(ゴーレム)映っていた。 「こいつは、破壊活動に参加していない。そして、特別なアイテムを身に着けている」 「手袋……これが呪具になってるってことだな」 「こいつだけか、他に何体かいるのかは分からないけど、とりあえずゴーレムだと思うんですよね」 「なるほどな」  ソーカルは「よく気付いた」と、トレフル・ブランの肩に手を置いた。 「襲撃があったら、お前たち三人はこのとりあえずゴーレムを見つけ出して捕縛しろ。それと、ボタンをつけた司令塔の役割を果たしていると思われるタイプ。これも、一体捕縛しておけ」 「分かりました」  トレフル・ブランは呪具をしまい、「ところで教官、ちょっと話があるんですが」と言いながら第二のポケット(セカンドポッケ)をまさぐった。 「げ。ちょっと待て、今度こそ本気で聞きたくないヤツのような気がする」 「まぁそう言わず。(エサ)をあげるのも、飼い主の責任です」  トレフル・ブランが引っ張り出したのは、例の白い獣――の変化した姿だった。ソーカル用に作り出したもので、黒い革の首輪、黒い瞳をしている。最も変化した部分は、体毛の色。もとは真っ白だったものが、今や黒色になっている。大きさもトレフル・ブラン程度しかなく、まるで本物の野生のオオカミのようだ。  キーチェに頼んでこれの分も『水の屈折結界』を作ってもらっていたので、さっそくかぶせて背景と同化させる。そして、ソーカルの手に干し肉を握らせた。 「さぁ、ごはんの時間です。あと、名前決めてくださいね」 「おい、これ、例のアレか? 何がどうしてこうなった? 色からして違うじゃねぇか!」  慌てるソーカルに、トレフル・ブランは先ほど小屋の中で起こった出来事を順を追って説明した。
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