episode 11. パートナー

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episode 11. パートナー

 亜生物というものは生物の性質を持っている、つまり生きているのだから食べ物を与えなくてはならない。  トレフル・ブランは、第二のポケット(セカンドポッケ)から四体の獣たちを取り出した。そして、驚いた。自分の三倍はありそうだった身の丈が、せいぜい自分たちと同じくらいの大きさに縮んでいるではないか。 「え、ごめん。食べ物あげなかったから小さくなったの?」  心なしか恨みがましい目つきで見られているような……トレフル・ブランが戸惑っていると、うちの一体、緑色の目と首輪をした個体が、小さく吠えた。すると、みるみる体が盛り上がり、トレフル・ブランが最初に見た巨大なオオカミのような白い獣の姿となった。 「まぁ! 大きさを自在に変えられるのね」 「みたいだね……キーチェ、これ、キーチェの子にあげて」  そう言って干し肉を手渡す。「青色の首輪の子ね」と、キーチェがその個体に干し肉をやると、待ってましたとばかりに飛びつく。ほかの三体もそわそわと尻尾を振った。 「なんだか、普通の犬? オオカミ? と変わらないね。俺もやりたいな」  ユーリもやってきて、赤い首輪の個体に干し肉を与えた。トレフル・ブランは、緑色の首輪の個体に、同様に餌をやった。黒い首輪の個体は、悲しげにその様子を見ていた――そう、瞳の色と連動させたカラーで、それぞれ首輪を与えている。そしてそれこそが、トレフル・ブランが獣たちを操るための呪具なのである。  彼らはトレフル・ブランが先生の力を借りて生み出した、立派な聖獣(イノケンス・フェラ)たちだった。魔導士たち、特に召喚を得意とする魔導士たちにとって垂涎の的になるほど貴重な存在である。生み出した以上、きちんと育ててやらねばならない。  トレフル・ブランひとりでそれを行うのは大変だったし、教育が行き届かないことも考えられた。生まれたばかりの聖獣(イノケンス・フェラ)、特に個性を付与された上位種は、外部の影響を受けやすい。 (ちゃんと世話してやらなきゃ。あぁ、なんか面倒見るものがどんどん増えてきたな――先生のところにいたころは、俺自身の面倒だけ見ていればよかったのに)
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