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キーチェ・アウロパディシーという名の、トレフル・ブランたちと同じく見習い魔導士の少女である。彼女は、トレフル・ブランとユーリの格好を見咎めると、器用に片方の眉を跳ね上げて抗議の意を表した。
「あなたたち。お日さまはとうに東の空に昇っているというのに、そのだらしのない格好はなにかしら?」
トレフル・ブランとユーリは、寝間着にガウンを羽織っただけの格好だった。それでも、洗顔を済ませているトレフル・ブランはまだマシなほうで、立派な赤髪が見事に爆発しているユーリに比べればだいぶ見栄えがした。彼女も、ユーリのほうに目をつけたようだ。
「まずは顔を洗っていらっしゃい! それと、もうすぐ朝食の準備が出来るそうだから、服装をととのえて降りてきてちょうだい。トレフル・ブラン、あなたも、本ばっかり読んでちゃダメよ」
たしかにトレフル・ブランは読書が好きだったが、今は課題のために仕方なく分厚い本と格闘しているのである――という言い訳はしなかった。言えば最後、三倍になって返って来るのが分かっていたからである。
トレフル・ブランは両手を上げて了承の意を示すと、いつもの服装に着替え、全身鏡の前に立った。
せいぜい、キーチェのお眼鏡にかなうよう、細部まできちん身なりをととのえなくては。
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