episode 12. 雪の魔導人形《ゴーレム》軍団

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episode 12. 雪の魔導人形《ゴーレム》軍団

 何度目かの交代ののち、彼らはやってきた。  その時、外で見張りにあたっていたのは、トレフル・ブランとユーリの組だった。ユーリは回転式拳銃(リボルバー)を空に向かって撃った。その爆音で、ソーカルとキーチェも小屋から飛び出してくる。  打合せ通り、トレフル・ブランとキーチェは、雪に魔法陣を描いた。錫杖の柄と他の呪具をあわせて魔法陣を描かねばならないキーチェに対し、トレフル・ブランの銀の万年筆は先生から譲られた“何にでも文字を書ける透明インク”が使える。雪上に魔法陣を完成させるのは、トレフル・ブランのほうが早かった。 「剥離(ディクリィ)!」  魔法陣はまばゆく発光し、光の道筋が白い無法者(ヴィート・ギャング)の足元を照らす。これで、彼らの「耐性」、衝撃や火炎魔法に対する耐性が()がされた。 「指向性は俺が!まずは陣を完成させて」 「分かっているわ――あと、お願い!」  キーチェの描いた剥離(ディクリィ)の術式に、白い無法者(ヴィート・ギャング)を追う指向性を付与し、さらにその力を増幅させる魔法をかけて解き放った。これで、ここにいる全体に耐性の剥奪(はくだつ)効果が及んでいるはずである。  すると、前衛組が力を発揮する。 「火炎大砲(ビッグ・バン)!」  ユーリの火炎魔法が、ゴーレムを爆発して破壊する。ざあぁぁと雪煙が立ち上る。 「……」  ソーカルは何も言わず、剣、あるいは剣が放つ衝撃波で、白い無法者(ヴィート・ギャング)たちを蹴散らしていった。  トレフル・ブランは叫んだ。 「ユーリ、乱発しないで! 探し物ができない。キーチェ、背後は俺が守るから、例のやつを!」 「あ、すまん!」 「今やってますわ」  それぞれから返答があり、ユーリは火力をおさえて、なるべく地面の雪を吹き飛ばさないように白い無法者(ヴィート・ギャング)を燃やしていった。キーチェはおそらく、『探知(サーチ)』と『拡大(スコープ)』を併用していることだろう。とすれば、かなり集中力を消耗することになる。  トレフル・ブランはキーチェをカバーできる範囲に身を置き、事前に作っておいた融雪剤を取り出した。見境なくばらまくわけにはいかないが、ピンポイントで白い無法者(ヴィート・ギャング)を狙うことは可能である。指先で摘まめる程度のルチル型の結晶を、魔力で操った風に乗せて飛ばし、向かって来るものを溶かしていく。 「トレフル・ブラン! 空中に浮かせろ!」  融雪剤のことだろうと、ソーカルの指示に従い結晶を舞い上げた。冬の白っぽい太陽の光を鈍く反射する結晶は、トレフル・ブランが起こすよりはるかに強力な風に巻き上げられ、より広範囲の白い無法者(ヴィート・ギャング)に降り注ぐ。  トレフル・ブランは、半分溶けかけたそれに、銀の剣を突き立てた。むろん、これにも融雪剤が塗布されている。繊細な銀を保護する魔法をかけた上で。雪国ならば使う機会もあろうかと準備していたのだが、予想以上に役立った。
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