episode 12. 雪の魔導人形《ゴーレム》軍団

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(正直、じかに融雪剤を撒くのはあんまり気が進まないんだけどね)  土壌にしみこむと、植物の成長に影響を与えるからである。しかし、内海に浮かぶ島々に生える植物だ、きっと丈夫に違いないと信じることにする。  キーチェの声が上がった。 「西にいますわ!ボタンの付いた雪だるまです――光の狼煙(アルメナーラ)!」  対象物の方角へ、オレンジの光が飛んだ。  すぐさまユーリが反応し、彼の相棒の名を呼ぶ。 「オリオン!追え!」  ユーリの第二のポケット(セカンドポッケ)から飛び出した見事な褐色の毛皮の巨大なオオカミが、対象を追って雪原を駆ける。地面を蹴るパワーとスピードは圧倒的で、すぐに対象の背後に回り込んだ。  炎の道で邪魔な雪を排除したユーリは、『動作停止の魔法』をかけた。生物や眷属には効かないが、命令がなければ動けないゴーレムには通じるハズである。  案の定、対象の雪だるまの動きが止まった。  これの動きが止まったことで、周囲の軍団の一部も動きを止め、体が崩れ落ち、雪へと返った。それでもまだ動いている軍団の数は多い。  捕まえたボタン付きの雪だるまは持ち帰って調べるため、『捕縛』と『保存』の魔法もかけておく。相変わらず第二のポケット(セカンドポッケ)を大量に持ち歩いているトレフル・ブランが、その中のひとつにそれを放り込んだ。  遠くから、魔力を伝ってソーカルの声が飛ぶ。 「まだ終わりじゃねぇぞ! なのを探し出せ!」  ほかの魔導人形(ゴーレム)を生産する能力があるのではないか、と推測されている個体のことだ。  戦闘の真っただ中ではなく後方に隠れているのではないか、というトレフル・ブランの予想に基づき、三人はそれぞれの聖獣(イノケンス・フェラ)にまたがり、隣の島を目指した。鞍がないので乗り心地は悪いが、致し方ない。  後方に雪煙が上がったので一瞬ひやりとしたが、パゴニア王国の正規軍のようだ。ソーカルと少し距離を置き、白い無法者(ヴィート・ギャング)を討伐している。ニ~三十人はいるだろう。さすがにものすごい速さで、白い無法者(ヴィート・ギャング)は数を減らしていく。  それを横目に見ながら、トレフル・ブランたちは、特別な魔導人形(ゴーレム)の捜索に散った。
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