episode 13. 復讐者

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episode 13. 復讐者

 トレフル・ブランは、獣の背に乗っていくつかの橋を渡り、不自然な魔力的存在を『探知(サーチ)』し続ける。  そして、見つけた。  やや薄汚れた雪の玉がふたつ、上の雪玉には木の実や葉っぱで作った素朴な顔、下の雪玉には洋服用の茶色いボタン、右手の枝に赤い系との手袋……どこからどう見ても、ただの平凡な雪だるまだ。  トレフル・ブランは、眉をしかめた。 (なんだって、こんなものを破壊の権化にしようと考えたんだろう)  これを捕縛し『時間の再生魔法(リプレイ)』を行えば、その背景も見えてくるかもしれない。  銀の万年筆を掲げ、『剥離(ディクリィ)』をかけようとしたトレフル・ブランの両脇の雪が、急激に盛り上がった。 「!? 風よ!」  慌てて術式を中断、巻き起こした風をぶつけて雪を崩し、逃げ道を確保する。雪に押しつぶされる寸前、獣がトレフルの襟首を引っ掴んで駆け抜けた。 「ガルルルル……」  白い獣は、がっしりとした巨体に変化し、低い威嚇(いかく)の唸り声を漏らしながら、そちらを睨んでいた。  トレフル・ブランも、その少年を見つけた。 「……君は、誰?」  攻撃か拘束か――高速で思考を回転させながら、油断なく銀の万年筆を構えるトレフル・ブラン。  少年はひたとトレフル・ブランを見据えた。凍てついた深い湖の底を覗き込んでいるかのような、暗い青灰色の瞳には、まぎれもない怒りがちらついていた。 「外国人だね、お前は。何故、外国人が邪魔をする。引っ込んでいろ」
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