episode 17.光の狼煙《アルメナーラ》

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 それから一時間も経たないうちに、町の北側からオレンジの光が打ち上げられた。襲撃を知らせる光の狼煙(アルメナーラ)だ。  トレフル・ブランはブランカを走らせ、教官とユーリに知らせた。彼らもすぐ、屋根の上に登って来る。 「橙色か。赤色じゃねぇな、少し様子を見よう」  ソーカルはそう言った。町の北側には港しかない、これは中央部にある移動用魔法陣(テレポーター)を狙った陽動ではないか、という可能性を考慮したのだ。 「青色の光を打ち上げろ。手に負えなければ、赤色の信号を送って来るだろう」  その指示に基づき、キーチェが錫杖を振って信号を送った。ちなみに、青色は「承知した」を意味し、赤色は「救援要請」を意味する。 「私、アレウスと一緒に、周囲の様子を確認してきますわ」  アレウスというのは、月光のような毛並みを持つ、キーチェの聖獣(イノケンス・フェラ)の名前である。 「俺も行く。お前ら、付近の警戒と、北側からの合図に気を配れ」  ソーカルは言い、キーチェといっしょに闇の中へ舞い降りて行った。  トレフル・ブランは青銅の鏡を取り出した。 「俺が、探知(サーチ)で不自然な魔力を探ってみるよ。ユーリは北側の様子を観察してて」 「分かった!」  しばらくはそのままそれぞれの役割に没頭したが、やがてトレフル・ブランの探知(サーチ)に、町の外側から押し寄せる魔力の波が引っかかった。 (それほど遠くないな)  思ったトレフル・ブランが光の狼煙(アルメナーラ)を打ち上げるより早く、その付近から赤色の光が上がった。教官たちが、その魔力の群れの源を見つけたようだ。 「ユーリ! ブランカ!」  叫ぶなり、ブランカにまたがり空中に躍り出るトレフル・ブラン。一拍遅れて、オリオンにまたがったユーリも続いた。
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