episode 17.光の狼煙《アルメナーラ》

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 雪だるまの群れが、町の一角に侵入していた。  炎と衝撃への耐性が大幅に強化されており、ソーカルの風の衝撃波でさえ、一撃で一体破壊するのがやっとだった (そりゃ、よほどのおバカさんじゃない限り、対策してくるよね)  トレフル・ブランがちらりと視線を送ると、キーチェが小さく頷いた。打合せ通り、広範囲の魔法が発動する。 「恵みの水(プルウィア)!」  空気中の水分を集めて真水を生成する、魔法使いならほとんど誰もが使える基本的な魔法である。ただ今回は事前の仕込みで範囲を拡大してある。  細い雨が広範囲にわたって降り注いだ。呪文の意味を理解している人間たちは、それぞれ風の障壁などで雨を防いだが、魔導人形(ゴーレム)にそのような知恵はない。まともに雨に打たれ、その体が徐々にいびつに。  そう、炎や衝撃への耐性があっても、ただのに対してはなんの警戒もしていなかったのだ。 「それじゃ、俺の出番だな。火炎大砲(ビッグ・バン)」  ユーリの回転式拳銃(リボルバー)から放たれた火炎魔法が、あちこちで大爆発を起こした。水に侵食されることによって表面の耐性が弱体化している雪だるまたちは、みるみる溶けて水たまりになっていく。後には、魔導人形(ゴーレム)の核として使われた木の実だけが残ったが、再利用されては困るので残りの三人で手分けして破壊していく。三十体以上はいたと思われる雪の魔導人形(ゴーレム)たちは、一体残らず破壊された。  それでも、ソーカルは警告を忘れない。  銀のライターで高速通信(ファルコ)に接続すると、移動用魔法陣(テレポーター)の警備部隊に、二か所で襲撃があったので警戒を怠らないよう通信を送った。 「さて。これで済んでくれりゃあ、話が早いんだが……」  というソーカルの願いは天に届かなかった。  家がまるごと動いたのか、と思われるほど巨大な影が、地響きを立てながらこちらへ向かって来る。  また面倒事がやってきた……と、トレフル・ブランは天を仰いだ。 「教官。日ごろの行いが悪すぎるんじゃないですか?」 「俺のせいにするな! お前、自分の行いはどうなんだよ」 「俺はいたってヒンコーホウセイです」  ソーカルの抗議に軽口で答えていると、それが姿を現した。  四階建ての家屋と同じくらいの背丈がある、巨大な魔導人形(ゴーレム)の登場だった。
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