episode 19. 復讐のその先に

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episode 19. 復讐のその先に

 聖獣(イノケンス・フェラ)にまたがり、トレフル・ブランとユーリのふたりは町を駆け抜けた。目指すは移動用魔法陣(テレポーター)が設置されているベレル駅だ。  白銀の輝きを放つブランカと、黄金のまばゆい毛皮が輝くオリオンは、どちらも暗闇の町中で目立った。特にブランカは、という色が「白き闇の眷属」を連想させるためか、ぎょっとした顔で構える人間が多い。と言っても、すれ違うのは町を巡回する警備兵たちだったから、騒ぎになるようなら後で教官にフォローしてもらおう。  山犬のような形状の聖獣なので、ハッキリ言って長距離移動にはあまり向かない。背中が大きく上下するので、捕まるのに必死で乗り心地が良くない。 (鞍がないのがやっぱり不便なんだよね。どこか大きな魔法都市にでも行けば、使い勝手のいい呪具を買うなり、キーチェに材料探してもらうなりできるんだけど)  キーチェの特技は、宝石や貴金属などに細工をすることによる呪具の制作である。名門アウロパディシー家の一員として、幼いころから上質な呪具、洗練された美術品に触れて育った彼女の美意識は、非常に高い。審美眼はもちろん、制作にもすぐれたセンスを示し、トレフル・ブランたちもたびたび世話になっている。 (いちいち第二のポケット(セカンドポッケ)から取り出すのも、いい加減面倒というか、可哀想というか……教官に頼んで召喚魔法の練習させてもらおうかなぁ。でも、そのまえに初級試験か)  トレフル・ブランがあれこれ考えていると、「ストップ。今は、目の前のことに集中しよう」とユーリから声がかかった。  トレフル・ブランは苦笑した。 「悪いね。考え出すと、夢中になっちゃうもんでさ」 「普段は構わないと、俺は思うぞ。でも、もうすぐ駅に到着だ」  ユーリの言葉に前方を見ると、石造りの駅舎が見えてきた。この中心部に、移動用魔法陣(テレポーター)が設置されている。  見張りの兵士に声をかけると、ソーカルからの連絡が届いていたらしく、すんなり中に通された。
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