episode 20. 少年王・コラルグランツ

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 ここは王国の北部に位置する、移動用魔法陣(テレポーター)が設置された町である。ソーカル一行は、ベレル駅襲撃の翌日からこの町、キルリクに滞在していた。昨日は別の町が襲われ、この町への被害はなかったため、一行の休日となったが、移動用魔法陣(テレポーター)というものは大掛かりな魔導装置なので、設置された町の数はそう多くない。いつ襲撃があってもおかしくない状況だ。 「それで、ペルルグランツの行方は?」  トレフル・ブランが本題に切り込む。  ソーカルは首を横に振った。 「見失った。代わりに、お前らがとっ捕まえた、特別な魔導人形(ゴーレム)の分析結果が出たぞ」  以前捉えた、手袋をつけた雪だるまのことだ。  ちらり、とソーカルの視線がトレフル・ブランのほうをかすめた。 「トレフル・ブランの予想通り、小型の雪だるまを作る機能が備わっていた。しかも、命令しない限り、自動で毎日一定量を生産するしくみだ」 「……げ。じゃ今もどこかで、ぽこぽこ雪だるまが生まれてるってこと?」  嫌な想像だが、ソーカルは頷いてそれを肯定した。 「どうやらこれと同じ機能を持った雪だるまは、あと三体あるようだ。まぁ、同時期に作られたもの限定で、ということだが。当面の目標は、こいつらの破壊だな」  ユーリが、腕組みをして「うーん」と唸った。あごに手をやる仕草は無意識のようだ。 「それはそれとして、俺としてはあの六つ目がある雪の犬も気になっています。なぁ、あれは結構な強敵だったよな?」  水を向けられたトレフル・ブランは、カップをソーサーに戻した。 「俺も、アレの対策どうしようかと思ってたとこ。けど、俺たちのほうには現れて、教官たちのほうには現れなかった……つまり、ペルルグランツ自身が操作する必要のある、精巧な造りの魔導人形(ゴーレム)なんだと思う。彼にさえ出会わなきゃ、戦わずに済むと思うけど。とりあえずはね」 「そっちの対策は、王都の魔導士協会でも考えてるところだ。兵士がひとつ、無傷の真珠を拾っていたそうだ。それを分析にかけている」  ひとまず六つ目の犬の対策は魔導士協会に委ねるとして、明日からは再度襲撃予想地点の警備にあたる。  そう決定し、その日はお開きとなった。
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