episode 22. 旅立ちの駅

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 執務があるからと、ペルルグランツは長居せず退出した。  ペルルグランツとソーカル一行は、荷馬車にまぎれてひそかに城を出た。トォオーノは名残惜し気に、バルコニーからその姿を見送っていた。  (ほろ)の中に、荷物と一緒になって五人もいるものだから狭苦しいことこの上なかったが、誰も文句を言うものはない。  やがて(わだち)の音に市場の賑わいがかさなり、城下町のメインストリートに入ったことがうかがえた。  そこにいる人々が噂している。 「……なんにしても、犯人が捕まったのはいいことだ。これで安心して行商に行けるってもんだ」 「犯人は自殺を命じられたって? どうせなら、縛り首にしてやればよかったのに」 「親戚が被害に遭った。命こそ助かったが大怪我だ。国から金だけもらっても、それで万事解決というわけにはいかん」 「王族がこんなことをしでかすなんてね……前の国王の息子だというから、それも納得かねぇ。まったくろくなもんじゃないよ」 「しかし、お飾りだとばかり思っていた若い王様が、今回はえらく立派に決断なさったもんだ」 「大人におなりんさったか、それかマグレかもしれんねぇ」  じっと耳をそばだてていたペルルグランツが、小声で言った。 「これが、町の人の声なんだね」  そうだね、トレフル・ブランが頷く。 「処分が決まったから、はいそれでめでたしめでたしってわけじゃない。傷跡をかかえながら、人々の営みは続いていくんだ」
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