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―スタットコール、スタットコール、救命病棟、救命病棟
「うっ…」
突然の馬鹿でかい音にびくりと布団の上で体を震わせ、時間を確認する。
午前5時45分。起きる予定の時間までまだ45分もある。今回の当直は30分毎とか1時間毎とかに起こされたから、いい加減もう少し寝かせてほしいのだけど。寒いし起きにくい。
うちの病院ではスタットコールが放送されたら手の空いているスタッフは全員救急バックをもってその場に駆けつけることになっている。今寝ている私もそれに該当するはするのだけれど。
「うぅう…」
体重いしだるいし。聞こえなかったことに…
『スタットコォルゥ、スタットコォルゥ』
薬剤部の当直室(要は寝る部屋)の扉があく音がする。それとともにふざけたようなのんきな間延びした声が大きくなる。
『手の空いている方はすぐに来てくださーい』
ばさりと毛布がはぎとられる。寒い!
「ちょっと!そんなことしなくても起きるって!」
寝ぼけた目で相手をにらむ。
『そんな目でにらまれても怖あないよ』
『そうそう。でもしょうがないですよ、夜あれだけ起こされていたならねえ』
『そうさなあ、俺ならそれこそ寝てるかもしれんからなあ』
『今はこんなに起きていられるんですけどね』
はっはっは。と笑う、朝からにぎやかな二人をほっておいて私は黙々と救急バックを用意。白衣装着。そして今まで寝ていたように見えないように髪をさっとまとめる。さっさと動いて薬届けなきゃ。使うかどうかは別として。
ふと気が付く。
「和美ちゃんは?」
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