第一章『脅迫状』

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レナはある部屋の前まで行くと立ち止まり、中に声を掛ける。 「パパ、友達連れて来たから入っていい?」 「あぁ、入っておいで」 中からレナの父親・吾一の声がした。 レナはドアを開けると、五人を中に入れる。 部屋の中には吾一だけがいて、ナオ達が入ってくると立ち上がって迎えた。 「こんにちは」 五人が声を揃えて言う。 「やぁ、みんなこんにちは。今日はわざわざ来てもらって悪かったねぇ」 吾一は一見どこにでもいそうな優しそうな父親である。 着ている服のせいかもしれないが、これがスーツだとビシッときまってまた違った感じになる。 「いえいえ、どうせ私達はいつも暇ですから」 トモが笑顔で答える。 「さぁ、みんな座って」 レナはそう言うと吾一の横に座り、ナオ達もソファーに五人並んで座り終えた時、入口のドアが開いてレナの母親・佐恵がトレーに手作りのクッキーとケーキ、そしてオレンジジュースをのせて入って来た。 五人は佐恵にも挨拶をした。 「みなさん、いらっしゃい。良かったら食べてね」 佐恵はそう言うと、五人の前にそれぞれクッキーなどを置き、最後にレナの前にも置くと、そのままレナの隣に腰をおろした。 ちょうどレナが両親の間に挟まれる恰好になっている。 「いただきま~す」 マサはそう言うと、いきなりクッキーを食べ始める。 「ちょっと~、マサ。少しは遠慮しなさいよ」 トモが慌ててたしなめる。 「いいのよ、トモちゃん。好きなだけ食べていいのよ、まだ沢山あるから」 佐恵が笑顔で言った。 「本当っすか~?ラッキー。それにしてもおばさん、このクッキーめっちゃ美味いっすよ~!」 マサは両手でどんどん口に運びながら喋っている。 その光景を見て、吾一と佐恵も微笑んでいる。 (ったく、さっきまでクッキーって聞いてガッカリしてたのに、これだからなぁ) ナオは内心では呆れながらも、つい笑ってしまう。
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