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「それよりおじさん、盗聴器は元に戻していただけましたか?」
いつもならトモが話を進めるところを、今日はタカが進め始める。
「あぁ、タカ君に言われた通り元の位置に付けておいたよ」
さっきまでにこやかな表情だった吾一が、真剣な表情をして言った。
それに影響されてか、他のメンバーも視線を二人に向ける。
「レナも大丈夫だし、犯人には一度外した事バレてないみたいですね」
「そのようだね。ところで、良かったらタカ君の考えをもう一度詳しく話してもらえないかな?」
「分かりました。僕の考えとしては・・・だと思うんです」
タカは吾一に対して、犯人のイレブンは錦食品の社員であり、真の狙いは吾一を社長から退かせることにあるのではないかと、自分の考えをまとめて分かりやすく話した。
「う~む、君の考えは筋が通っていて頷かざるを得ない・・・しかし、私としては自分の会社の社員がやったとはどうしても思えないんだ」
吾一は辛い表情で言った。
「でも、実際に盗聴器が仕掛けられているんですよ」
それまで二人の話を聞いていたトモが会話に入る。
「おじさまの気持ちも分かりますけど、現実から逃げちゃダメです」
「そうよ、あなた。社員を信じる事も大事ですけど、今回はレナに関わることなのよ。父親なら娘のことを第一に考えて下さい!」
今までおとなしく話を聞いていた佐恵が、トモに続けて母親としての意見を述べた。
佐恵にきつく言われた吾一は、レナの顔を見て頭を撫で胸に抱きしめると、しばらく考えてから決心したようにレナを離し、ナオ達に向かって言う。
「分かった。私は社長である前に、一人の父親なんだ。娘を守るためだったら、社長を辞めても構わない!」
「パパ・・・私嬉しい」
吾一の言葉を聞いて、レナは涙ぐんでいる。
「おじさん、社長は辞めなくても大丈夫っすよ!俺達がいるじゃないっすか!」
マサが力強く言う。
それに続けて、リナとトモも
「そうそう、私達がレナのことはちゃんと守ってあげます!・・・ねぇ~」
と、声を揃えて言った。
「みなさん、ありがとねぇ・・・」
佐恵が目頭を押さえながらお礼を言う。
「イレブンはきっと僕達が捕まえてみせます!」
いつもクールなタカが珍しく興奮している。
「俺達六人が揃えば不可能なことなんて無いんです!なっ、レナ?」
ナオがレナに促すと、
「うん、だから一緒に頑張ろう、パパ?」
涙を拭いながら吾一を見つめて言った。
「・・・みんな、ありがとう。私達もできる限りのことはするから、レナのことも含めてよろしくお願いします」
吾一はそう言うと、佐恵と共に頭を下げる。
「おじさん、おばさん頭を上げて下さい!俺達はただ大事な仲間のレナを守りたいだけなんです。それに、俺達全員ヤバイこと大好きだから、気にしないで下さい」
そうナオが言うと、他のメンバーも頷きながら笑っている。
それを見て、吾一と佐恵も安心したように笑顔になった。
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