484人が本棚に入れています
本棚に追加
「確かにマサ君の言うことにも一理あるんだ・・・」
吾一はそう言うと、また肩を落とした。
「おじさん、そんな落ち込まないで。まだ山本さんがイレブンって決まったわけじゃないんだし。それにその噂もイレブンが流したものかもしれないし・・・なぁ、タカ?」
ナオはさっきからずっと考え込んでいるタカの方を見て言った。
「うん、そうですよ、おじさん。・・・でも一つだけ言えることは、イレブンというのはおそらく四人の中の誰かに間違いないと思います。だから辛いとは思いますが、レナの為だと思って気持ちをしっかり持って下さい。おじさん達の協力が無いとイレブンを見つけることは出来ないんですから」
タカは静かだが力強い声で言う。
ナオもこの声で何度励まされたことだろう。
その時の事を思い出すと胸がジーンとしてくる。
錦夫妻の表情が、タカが話す前と後では明らかに違っているのがナオにも分かった。
「みんな、すまない。ついこの間レナの為に頑張ると約束したばかりだったのに、まだどこか吹っ切れない部分があったようだ。しかしもう大丈夫だ。私達は弱い夫婦だが、レナのことを思う気持ちだけは誰よりも強い。自分の部下がやった不始末だ、社長の私が後始末しないでどうする。なぁ、母さん?」
「そうですよ、あなた」
佐恵は吾一の方を見てニッコリ笑った。
その光景を見ながら、マサがタカの肩を叩く。
「さすがタカだぜ。社長まで元気付けちまった!」
女性陣もタカを褒めそやす。
当の本人はさほど気にもしていないようだが、あれでも照れているのである。
長年付き合っているナオにはそれがよく分かる。
最初のコメントを投稿しよう!