第一章『脅迫状』

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さて、話を元に戻します。 トモが不安気な顔で聞いてきたが、ナオは 「あれっ、そうだっけ?まぁ、いいじゃん。 とにかく行こうぜ!」 と、笑って誤魔化した。 「もぉ~、テキトーなんだから・・・」 文句を言いながらも、トモも笑っている。 そして二人揃って教室の後ろのドアの近くまで行くと、ナオがそっと中の様子を窺った。 すると、偶然後ろの席のタカに話しかけていたリナと目が合った。 リナはナオに気づくと、腰の辺りで小さくVサインをし、それから自分の頭をしきりに指差している。 (「なぁ、リナが何かやってるんだけど、分かるか?」) ナオは小声でトモに話しかけた。 (「えっ、ちょっと見せて」) そう言うと、トモはナオの背中越しに教室の中を覗く。 (「ん~・・・頭に何か付いてるわけでもないし・・・なんだろう?」) (「もしかして、頭が悪いっていうのをアピールしてるんじゃないか?」) (「そんなこと私達にアピールしてどうすんのよ!」) ナオのボケに対するトモのツッコミが決まった、ちょうどその時、 「細木さん何してるの!?前を向いて授業に集中しなさい!」 リナを叱る教師の声がした。 (「あらら~、リナがアゴ入り娘に怒られちゃった・・・私達のせいだよ」) (「何言ってんだよ。リナが怒られるのは日常茶飯事のことだろ。それよりどうする?アゴ入り娘の奴、今機嫌悪いぜ・・・もうちょっと待つか?」) (「え~、ダメだよ!早く入って授業受けなきゃ!」) トモはそう言うと、ナオの意見も聞かず教室のドアを開ける。
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