第一章『脅迫状』

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ガラガラッ (ったく、これだから真面目ちゃんは・・・) と、心の中では文句を言いながらも、ナオもトモの後に続いて教室の中に足を踏み入れた。 その時、ナオはお腹に手を当てて、できるだけ目線を下にして入ることを忘れなかった。 二人が教室に入ると、教室中の目という目が二人の方に向けられた。 その中でも一番鋭い目線を送ってきた人物が口を開く。 「外畑さん、町下君。夫婦揃って社長出勤とはいいご身分ですねぇ?」 皮肉混じりに二人に問いかけたのは、国語の教師、阿部タイ美。 四十を過ぎても独り身で、周りには、 「小さい頃から箱入り娘みたいに大事に育ててもらってるから、なかなか両親の元を離れて結婚するなんて出来ないのよ。結婚はしようと思えばいつでも出来るんだけどねぇ」 と言っている。 しかし、生徒の間では、阿部が何度お見合いをやっても断られ続けているという噂が広まっていた。 しかもその理由は、阿部のアゴが原因だということだ。 確かに、アン○ニオ○木にも勝るとも劣らない立派なアゴなのである。 そんなこんなで、阿部に付けられたあだ名は『アゴ入り娘』。 もちろん命名したのはナオで、ハゲヅラ同様、生徒の間に定着している。
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