第一章『脅迫状』

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「ところで・・・町下君?」 その時、阿部がまたナオに声をかけてきた。 ナオは混乱していたが、無理に気持ちを落ち着けると、阿部の方を見た。 すると、ついさっきまで心配の表情を見せていた阿部の顔が一変していた。 いつもの皮肉顔に戻っていたのである。 ただ一ヶ所変わっていない部分といえば、持って生まれたその立派なアゴだけである。 ナオにとっては、ずっと変わらない阿部のアゴが唯一の救いであった・・・。 「あなた頭の方はどうなの?」 阿部が満面に嫌な笑みを浮かべながら聞いてきた。 「えっ、頭?頭は悪いっすけどぉ・・・」 「あなたが頭悪いのなんてみんな知ってることでしょ!」 阿部のキツ~イ一言で教室中は爆笑になった。 ナオは笑い者になったことで「ムカッ!」としたが、あえて冷静を装って、 「じゃあ、何なんですか?」 と阿部に聞く。 「頭は痛くないのか聞いてるの」 「えっ、頭はこの通り大丈夫ですけど」 ナオは自分の頭を二、三度コツコツ叩きながら言った。 「あら~、そうなの~、どういうことかしら・・・細木さん!」 突然名前を呼ばれたリナが慌てて立ち上がる。 「はい・・・あの~、その~・・・」 いつものリナと様子が違う、といち早く気づいたトモは、ようやく状況が分かった。
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