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「ところで・・・町下君?」
その時、阿部がまたナオに声をかけてきた。
ナオは混乱していたが、無理に気持ちを落ち着けると、阿部の方を見た。
すると、ついさっきまで心配の表情を見せていた阿部の顔が一変していた。
いつもの皮肉顔に戻っていたのである。
ただ一ヶ所変わっていない部分といえば、持って生まれたその立派なアゴだけである。
ナオにとっては、ずっと変わらない阿部のアゴが唯一の救いであった・・・。
「あなた頭の方はどうなの?」
阿部が満面に嫌な笑みを浮かべながら聞いてきた。
「えっ、頭?頭は悪いっすけどぉ・・・」
「あなたが頭悪いのなんてみんな知ってることでしょ!」
阿部のキツ~イ一言で教室中は爆笑になった。
ナオは笑い者になったことで「ムカッ!」としたが、あえて冷静を装って、
「じゃあ、何なんですか?」
と阿部に聞く。
「頭は痛くないのか聞いてるの」
「えっ、頭はこの通り大丈夫ですけど」
ナオは自分の頭を二、三度コツコツ叩きながら言った。
「あら~、そうなの~、どういうことかしら・・・細木さん!」
突然名前を呼ばれたリナが慌てて立ち上がる。
「はい・・・あの~、その~・・・」
いつものリナと様子が違う、といち早く気づいたトモは、ようやく状況が分かった。
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