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ふわふわのオムライス
雪の家は、マンションの最上階の角部屋で、中に入ると、最低限の家具がセンス良く配置されていた。なんとなく暖かい気持ちになり、ただいまと言いたくなるそんな不思議な感じがした。
俺は雪について、リビングに通されるとソファにでも座ってちょっと待っててと言い置くと、キッチンの方へ行ってしまった。
俺は、来ていたブレザーを脱いでバッグと一緒に置いて大人しく待つことに決めた。
そんな時間をかけずに雪はマグカップを持って俺のところまで戻ってきた。服はいつのまにか着替えたらしく、黒い長袖のシャツにジーパンというラフな格好になっていた。
「ご、ごめん、おまたせ!紅茶でよかったかな?聞けばよかったね、、ごめん。」
俯き、ぷるぷるとなんかまた泣き出しそうな雰囲気である。そんな顔するな、、。
せっかくのかわいい顔が台無しじゃねーか。
「そんなに待ってないし、紅茶で大丈夫だ。それに、そんなに謝るなよ。俺は気にしてないし、ダメな時はダメだって言うから。な?だから謝ってくれるな。」
そう言って彼の頭を撫でると安心したかのようにふっと肩の力を抜いたのがわかった。
「夕飯、なにか手伝う事あるか?」
そうたずねると、彼はちょっと考えてから、
「夕飯は大丈夫なんだけど、洗濯物を取り込むの忘れてて、雨降りそうだから急ぐために手伝ってもらってもいい?」
と申し訳なさげに言うので、
「わかった、雪がオムライス作るの頑張ってる間に、俺は洗濯物取り込んどく。畳むまでやったらやりすぎ、か?」
彼は慌てて首をぶんぶんと横に勢いよくふった。
「そんな事ない!けど、、そんな事までしてもらってそれに見合うほどのオムライスを作れる自信がないな、、、。」
なんとなくだが、食べる前から俺の第六感が告げているのだ。雪のオムライスは美味しい筈だ、と。勿論なんの根拠もないが。
「気にするな。俺達、友達だろ?飯代とでも思ってくれると助かる。」
「、、、ほんとありがとう翔。じゃあ、翔の為に美味しくなるように頑張ってオムライス作ってくるね。」
そう言って花が咲いたように笑った。
俺は、その笑顔がやけに脳裏に焼き付いて離れなかった。
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