1.転職します。

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1.転職します。

 都内のレストラン。とあるカップルの2次会の席で、私――七海結月(ななみゆづき)はテーブルの上のカーネーションの装花をぼんやりと見つめながら、 (あーあ、私、何でこんなところにいるんだろ……) と溜息をついた。  皿の上には、ブッフェから取って来た料理が中途半端に残っている。サーモンのマリネ、カプレーゼ、魚介のパスタにローストビーフ。あれこれと取って来たので、お腹はかなり膨れていた。 (でも……食べる!)  私は気を取り直すと、ローストビーフにフォークを突き刺した。 (食べないとやってられない!) 「次は……5番です!」  会場では、今まさにビンゴ大会が開かれている。司会の男性が、ピンク色のドレスを着た新婦からビンゴボールを受け取り、数字を読み上げた。それを聞くともなしに聞きながら食事を続けていると、隣の席に座っている会社の後輩の紀本英恵(きもとはなえ)が、 「あ、また、数字ありましたよ、七海さん」 特に興味もなくテーブルの上に置きっぱなしにしていた私のビンゴカードを手に取った。 「穴、あけておきますね」 「うん」 「私のは全然当たらないなぁ~」 「そのカードあげるわよ」 「いえいえ、これは七海さんのですから」  先程から私の代わりにビンゴカードに穴をあけてくれている彼女に勧めてみたが、紀本さんは律儀に首を振った。     周囲のテーブルからも「私、あった」「ああ~、また外れた」などの声が上がり、ビンゴゲームはそこそこ盛り上がっているようだ。
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