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歳を経た飼い猫は猫又になるなんて言い伝えがある。
猫又になった猫は尻尾が二つに分かれて、知恵もつくらしいけれど。
ニャア。
サスケが短く鳴いた。
小さな頃からずっと一緒にいるこの子が猫又になって喋ることができるようになったら?
そんなことを妄想すると少しだけ今の気持ちが和む。
お父さんからの連絡はない。
「お母さん、大丈夫かな?」
予定日は聞いていたけれどいよいよその日になると、とても落ち着かない。
「弟かぁ」
まさか自分がお姉ちゃんになるなんて。
「緊張しちゃうな」
ニャア。
サスケが応えるように鳴く。
と思ったら、ソファに座る私の膝元にまでやってきて見せびらかすみたいにお腹を見せてきた。
「はいはい」
サスケの茶白毛のお腹に指を埋める。そのまま指で優しく撫でるとサスケは満足そうに身を揺らした。
「甘えん坊なんだから」
ニャア。
スマホに通知は来ていない。
リビングでテレビを流しながら待っているけれど、お父さんからの連絡はなくて。
次第に眠気が襲ってくる。
弟。新しい家族。
お姉ちゃんとして頑張らないと。
でもサスケもいることだし弟が一人増えるだけかな。
無事に産まれて欲しいな。
………。
……。
…。
ガチャンっと。
玄関の鍵が開く音で目が覚めた。
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