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そのまま歩いていると突然後ろから声がした。
「あの、すいません。」
可憐な女の声だった。
俺の日常とは関係ない声だと判断したので無視していると、もう一度、今度は少し早足で移動し、回り込み、俺の目の前に飛び出して声をかけてくる。
「あの、すいません。お時間よろしいですか?」
「なんだよ、今忙しいんだよ。ムリムリ。時間なんてねえよ。」
そう邪険に言っても女は諦めずに続ける。
「ほんの少しお話を伺うだけでよろしいのです…」
「怪しい宗教かなんかか?」
頭に大きなリボンをつけて綺麗な服を着ている。
明らかにいいとこのお嬢様のような見た目をしている目の前の女は勧誘する側というより怪しい団体の本部にいそうな感じではあった。
「違います…ただ少しお話を伺いたいだけで…」
「なんかそれで俺にメリットあんの?」
女は少し黙って考えていた。
「そうですね…私のよく行くフレンチレストランでお昼ご飯をご馳走させて頂くなんてどうでしょうか。」
飯を食う金もない俺にはその提案は魅力的だった。
適当に話を聞いて飯だけ食って帰ることにしよう。
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