はめごろしの夏

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 案内された角部屋の南東には一般的な引き違いの窓ガラスがある。  しかし、北東側には小さな窓しかなく引き手がない。 「ああー、そっちは、はめごろしですねん」 「はめごろし?」  私はその穏便では無い言葉に眉をひそめた。 「実は・・・・・・こっちは北東の方向で、京都では鬼門とされてますにゃ」 「きもん?」 「鬼に門て書きますねん。亡くなったおやじは迷信深くて、魔物が入ってこおへんようにって、わけのわからんこといいだして……」  はめごろしという言葉が心のどこかにひっかかったが、お金のない私は結局この部屋に決めるしかなかった。
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