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その智子が全身ずぶ濡れになり寂しそうな顔をして、窓の外に立っているのだ。
いや、浮いているのか。
彼女を自分の部屋に招き入れてやりたかった。
しかし、この窓は、はめごろし。
「ありがとう」
私がそうつぶやくと、憂いを帯びた少女の顔の眼がつり上がり、唇が大きく裂け巨大な口を開け、背を向け消えていった。
私はその後、何時間も手を合わせ、一心不乱に彼女のために祈り続けた。
(了)
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