おばけ

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 私は慌てて備え付けのチリ紙でお尻を拭くと立ち上がり、恐る恐る穴の中をのぞいてみた。  大きな白い口が暗やみの中にはっきりと浮かび上がっている。  全身の血が心臓に向かい、足がガタガタと震えた。 「……おばけや」  ようやく声にすることができた。  おばけの口は開かれたままだったが、大便が落ちてこないので、パクパクと虚しく開閉させた後、 ―ボコ、ボコ、ズブンー  という音とともに体を反転させ、銀色のウロコを鈍く光らせ肥溜めの底に沈んでいった。
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