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4.
雪がゆっくりと、降り積もる。
いつのまにか、吹雪は止んでいた。
男は女をそっと抱き締めたまま、静かにその黒髪をすいている。
「····いくら美しくとも、寂しかろう」
不思議な色を帯びた男の声が、女の耳の内側に溶けていく。
だんだんと聞こえなくなるそれが、どうしてか、たいそう惜しいように思えたとして。
やはり、どうすることもできはせぬ。
分からないまま、女は答えた。
「寂しくはない。ただ、寒いだけです」
男はまた笑う。
繰り返し、優しく髪をすきながら。
男との会話は、それだけだった。
男はそうして、ぬくもりを女に預け渡すかのようにして女を抱き締めたまま、雪の中で目を閉じた。
その腕が動かなくなるまで、女はじっと男の腕の中にいた。
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