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 いつの出来事なのかは知らぬ。  人里離れた北の雪原に、ぽつんと一軒だけ、みすぼらしい小屋が建っていた。  少し傾いて崩れかけた、藁葺き屋根の小さな家屋。   はて、誰が建てた訳でもない。  いつのまにかそこにあり、どんな吹雪の襲った日にも、決して壊れることはない。  なぜそこにあるのか、誰も知らぬ。    誰が暮らしているのか、誰も知らぬ。  その小屋のことを知る人間は、すでにこの世には誰もおらぬ。    その夜に限って、やけにひどく激しい吹雪が吹き荒れていた。  今にも息の絶えそうな旅人が一人、その小屋の明かりを目指して、雪原の暗闇の中を必死に這い進んでいた。  
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